「インター・プレス・サービス」(Inter Press Service /IPS)という通信社をご存知でしょうか。
インタープレスサービス(IPS)は、地球規模の諸問題と密接に関連する南(開発途上国・地域)における諸問題を、北(先進国)の政策責任者、NGO、各種専門家にコマーシャリズムに左右されることなく伝えていくことを理念として、1964年(昭和39年)に発足したローマに本部を置く、開発分野専門の国際通信社です(Inter Press Service Japan のサイトから)。
"Inter Press Service Japan"(IPSJ)は、そのIPSのニュースを日本で配信する機関として2003年に設立されたNPOですが、このIPSJが今年の3月、憲政の父尾崎行雄ゆかりの第10回「咢堂賞」を受賞しました。
受賞式での講演で、IPS総裁のマリオ・ルベトキン氏が次のように言っています(朝日新聞2006年3月21日「ひと」欄より)。
テロが起きたとき、大手メディアは速報や犯人探しに躍起になる。我々はテロの背景を伝え、大手が関心を示さなくなった後も伝え続ける。
IPSJのサイトにはIPSの記事の日本語訳がのっています。たとえば6月24日付の最新記事では、イラクのラマディの情勢を次のように伝えています。
米軍がバグダッド西方の都市ラマディに大攻勢を仕掛け、人々の生命が危機に陥っている。
街中ではレジスタンスの武装勢力がうごめき、米軍のスナイパーが屋根の上からその武装勢力を付け狙っている。ラマディにはスンニ派のレジスタンスが巣食っているというのが大攻勢をかけた米軍側の言い分だ。しかし、IPSの取材によれば、米軍は民間人をも狙撃の対象にし、武装勢力と戦うために民間人の家屋を強制使用しているという。
戦闘が激しさを増すにつれ、水・電気・ガスなどのライフラインは絶たれ、十分な医療行為もできなくなっている。しかし、イラク赤新月社のイマド・アルムハマディ氏によると、2004年11月のファルージャへの大攻勢のときと比べて、ラマディの状況はもっと厳しいという。というのも、人々は、宗派的な暗殺団の存在に脅えて、戦闘が行われている地域から離れることができずにいるからだという。(後略)」
他にも、日本の普通のメディアにはのらないような世界各地からの記事が掲載されています。「普通の報道では満足できない、もっと知りたい」という方はIPSJのサイトを一度ご覧になってはいかがでしょうか。英語に強い方はIPS本家のサイトをご覧になれば、世界の各地域ごとに膨大なニュースが配信されています。
インター・プレス・ジャパン / こちらが日本のサイト
インター・プレス / こちらが本家
咢堂賞 /(財)尾崎行雄記念財団
今週、NHKBS2で「伝説の歌姫たちの世界」というシリーズが放送されました。13日が越路吹雪、14日がテレサ・テン、そして15日がちあきなおみでした。過去数回にわたって再放送されていますので、ご覧になった方も多いと思いますが、今日はテレサ・テンを取り上げたいと思います。
番組(「歌伝説 テレサ・テンの世界」)では、オープニングの「時の流れに身をまかせ」から始まり、「空港」、「つぐない」、「愛人」、「別れの予感」などが、彼女の日本でのあゆみとともに放送されましたが、台湾、香港での活動についてはほとんど触れられていませんでした。
彼女が中国と台湾の間の政治に巻き込まれていくなかで、抱えてしまったものの重さについては、有田芳生の『私の家は山の向こう テレサ・テン十年目の真実』に詳しく書かれています。
中華圏のスーパースター「テレサ・テン」。10年前にタイで急死したその短いが波乱に満ちた生涯を丁寧で重層的な取材、抑制の効いた筆致で再構築した傑作。付録のCDに、天安門事件に対する抗議集会に駆けつけた彼女が披露した、本書のタイトルにもなった歌が収められている。
日本ではやった彼女の歌に無関心だった私はこれを聞いて身震いした。台湾と本土に分断された国家の過酷な歴史と政治権力に翻弄されながらも同胞と運命を共有することによって彼女はアーチストとしても人間としても成長し、その歌は引き裂かれた同胞たちを繋いでいる。
(米原万里「読売新聞」2005年8月7日)
番組で歌われた「つぐない」、「別れの予感」は好きな歌のひとつですし良かったのですが、急死する1年前の「歌謡チャリティーコンサート」での「夜來香」はあまり声も出てなかったし、何か切なかったです。
今、NHK教育の『知るを楽しむ』というシリーズの『この人この世界』で、『アフガニスタン・命の水を求めて - ある日本人医師の苦闘』という番組が放送されています。
この放送は、パキスタンでの医療活動を支援する目的で結成され、1984年から現地活動を開始し、現在パキスタン北西辺境州とアフガニスタンで、1病院と4診療所を運営している「ペシャワール会」の現地代表を務めている医師、「中村 哲(なかむら てつ)」氏が、現地での22年間を振りかえりながら、「極貧の国」の現状と同時代に生きる日本人として何ができるのかを語っていくものです。
2001年の米同時多発テロから、タリバン政権崩壊に至るまでは世界の注目を集めたアフガニスタンですが、東京での復興会議とその後のカルザイ政権成立以降、日本ではほとんど報道されなくなりました。番組の中で氏は、山岳無医地区の診療から、井戸の掘削、灌漑用水路の建設まで、内戦、空爆、旱魃に見舞われたアフガニスタンの大地から、真の幸福とは何かを問いかけます。
放送は毎週月曜日午後10時25分から10時50分まで。6月から7月まで全8回の放送です。すでに第1回が放送されていますが、これからでも見る価値があると思います。
放送スケジュール
ようやく復興が緒についたばかりのアフガニスタンで、南部を中心に再び治安が悪化しているようです。2002年1月21日、東京で開かれたアフガニスタン復興支援会議で、当時の暫定政権のカルザイ議長が言った、「私は何もない国、荒廃と戦争以外に何もない国から来ました。」という言葉が忘れられません。
私は何もない国、荒廃と戦争以外に何もない国から来ました。出席者は今朝、きれいな洋服を着て温かい朝食をとったでしょう。だが、思い出してほしい。わが国には子供を学校にやれず、治療を受けることもできない何百万人もの人々がいるのです。
NHK 知るを楽しむ この人この世界 / 番組内容紹介ページ
ペシャワール会 / 中村氏が現地代表を務めるペシャワール会のサイト
アフガニスタン情報 / 国連難民高等弁務官事務所
V6の岡田准一と宮沢りえ主演で評判の映画、『花よりもなほ』を見てきました。監督は『誰も知らない』の是枝裕和です。宮沢りえの演技を見たかったのと、それなりに評判の「人情時代劇エンターテインメント」ということで少しは期待していたのですが...
はっきり言って全くおもしろくなかったです。
なぜおもしろくなかったのか。ひとことでいうと「映画にすじがとおっていない」ことに尽きると思います。ここでいう<すじ>は映画のストーリー性のことではなく、映画の中で何を描きたかったのか、何をいいたかったのかが見えてこない、結局「人が描けていない」ということです。
『誰も知らない』では、描こうとしないことで柳楽優弥クンがカンヌの男優賞をとったわけですが、今回は全くだめですね。
それと、同じように庶民の貧しさを描いても、「たそがれ清兵衛」の山田洋次や「雨あがる」の小泉堯史のような「ある種の美しさ」がないですね。映像(美術)に品がないというか。
宮沢りえの魅力も引き出せてなかったし、「見て損した」映画でした。
スタッフ
キャスト
… 映画の公式サイトはこちら