帰りの電車の中で読む本がなくなって、会社帰りに本屋で何となく手にとった本だったのですが...
2002年に第8回小説新潮長編新人賞を受賞した、作者のデビュー作。解説の北上次郎の言葉を借りれば「ガテン系のナニワ青春物語」です。
主人公は、大学生でいることに意味を見出せなくなって、建築現場で型枠の解体屋として働いているイズミ。作者は、彼を取りまくガテンな仲間たちと大阪の下町の人々を生き生きと描き出します。全体の構成も、登場人物一人ひとりの人物描写もビビッドで、なんといってもテンポのいい大阪弁の会話がいい。
なんだかんだで、物事は進む。それを悲劇にするか喜劇にするかは、本人の意思次第だ。だから、ワケが分からなくなったり気が滅入ったりすることの多い世の中だけど、取り敢えずシラけたりせずに頑張っとけ。春は来る。(本の帯より)
あらすじを読んでも、この小説のおもしろさはわからないと思うので、書きません。今年直木賞をとった「三浦しをん」の『まほろ駅前多田便利軒』もよかったですが、私には『太陽が...』の方がずっとおもしろかったし、しっくりきました。
この作品のことも作者の三羽省吾のことも知らなかったのですが、こういう本に出会うと、本好きの幸せを感じますね。文句なしにオモシロイ。オススメです。
太陽がイッパイいっぱい / 三羽省吾(文春文庫)