1月15日の日経新聞朝刊の10面に、プレジデント社が主催している「環境フォト・コンテスト 2007」の入賞作品が発表されていました。プレジデント社のサイトにも入賞作品が掲載されましたので、ご紹介します。
いくつかのテーマに分けて入賞作品が選ばれていて、自然の風景や生き物の写真もいいのですが、やはり人の表情の一瞬をとらえたものに共感を覚えました。
例えば、「田植え」と題するこの写真や、「吉日」と題するこの写真ですが、なかでもいいなと思ったのが、次の2作品です。
「クラスメイト」の方は、かがみこんで、杖をついた友達の女の子の靴の紐を結ぶ少年、「よろこび」の方は赤ちゃんを抱く若夫婦の本当に幸せそうな姿がとらえられています。
どれも、撮る側の人間も含めて、人と人との絆を感じる瞬間をとらえた、いい作品だと思います。
環境フォト・コンテスト / プレジデント社のページ
NHKBShiで1月5日に再放送された映画『HAZAN』を見ました。板谷波山が苦難の末、焼き物を芸術にまで高めるまでを描いた作品です。
2004年、ブルガリア・ヴァルナ第12回国際映画祭グランプリを受賞した作品ですが、小ホールなどで地味に公開されただけなので、ご覧になった方は少ないのではないでしょうか。
東京でも3年前に恵比寿の東京都美術館で公開されたのですが、あっという間に公開が終わってしまい、観られませんでした。
主演は「波山」を榎木孝明、その妻「まる」を南果歩。榎木の波山はまさにピッタリ、南果歩も波山を支えたまるを好演していました。ですが何といってもすごかったのが、ロクロ師として波山の晩年に至るまで半世紀以上にわたるパートナーとなった現田市松役の「康すおん(かんすおん)」の演技です。
いや~、驚きました。存在感のある演技というのはこういうのを言うのではないでしょうか。市松という人を私はもちろん見たことはないわけですが、目の前にその人がいるような、迫真の演技でした。
ところで、BSJAPANで1月9日から、『榎木孝明が描く風景~日本の世界遺産~』という番組が放送開始されました。3月27日まで12回にわたって放送されます。現場で榎木さんがスケッチする過程も放送されますので、絵の勉強になると思います。
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キャスト
渋谷のBunkamuraギャラリーで開催中の、「ミヤケマイ展 在る晴れた日 -one fine day-」を見てきました。
こちらの案内状を見ていただいてもわかると思いますが、なんともいえず楽しいイラストを描く方です。
横浜生まれ。独学。2002年から作家活動を開始。渋谷 Bunkamuraギャラリー、銀座村越画廊、ラフォーレミュージアムといった画廊活動のみならず、2005年からは水戸芸術館、上海多倫現代美術館等の美術館での企画展などの個展活動を中心にしている。NTTDoCoMoやユナイテッドアローズ グリーンレーベル、and A、セブンイレブンなどの企業とのコラボレーションも行っている。
私はミヤケマイさんが作家活動を始めてすぐの頃からのファンですが、今回の展覧会を見て、作品の幅が広がったように感じました。
彼女の作品の魅力は、なんといってもその独創的な着想、そしてシンプルな線と美しい色だと思いますが、イメージを表現する技術力にもあらためて気づかされました。
会場にはちょうどマイさんも来ていて、制作方法についても説明してくれました。Bunkamuraギャラリーでの会期は1月9日までですが、3月には西麻布の「ギャラリー ル・ベイン」で、そして4月には有楽町の「東京国際フォーラム」で作品が展示されるようです。興味をもたれた方はどうぞ。
MAI MIYAKE HOMEPAGE / ミヤケマイさんの公式サイト
Bunkamura / Bunkamuraのサイト
偶然ですが、分類すれば「子供あるいは青少年向け」といわれる小説を、続けて3冊読みました。
1冊目の『しずかな日々』は、『十二歳』で2001年第42回講談社児童文学新人賞を受賞した椰月美智子の3冊目の本で、主人公の小学5年生の少年が祖父と過ごしたひと夏の物語です。
タイトルどおり、静かな日々が淡々と描かれているだけなのですが、自分に引きこもりがちだった少年が、祖父という「まっとうな」大人によって徐々に心を開いていく過程が描かれています。
永遠に続くように思われた子供の頃の夏休みの、白く照り返す道や蝉の声、水しぶきのあがるプールの風景などを思い出させてくれる作品です。
2冊目の佐藤多佳子の作品は、いま大評判の『一瞬の風になれ』3部作の1作目です。サッカーでは落ちこぼれだった「新二」と幼馴染の天才スプリンター「連」との青春スポーツ小説ですが、自分自身がトラックを走っているような気持ちになるほど、スピード感あふれる爽やかな小説です。
通勤の行き帰りで1日で読んでしまいました。
3冊目の『僕は勉強ができない』は、同じ作者の『風味絶佳』が良かったので、『晩年の子供』とあわせて読んだものです。
わたしは知らなかったのですが、1996年に鳥羽潤クン主演で映画化もされ、非常に人気のあった作品です。自分自身の価値観を大事にすることの「大変さ」と「大切さ」を思いおこさせてくれる作品です。
わたし自身は普通の、従来の価値観から一歩も踏み出せずに中高年と呼ばれる年になってしまいましたが、主人公の「秀美」クンと同年代の子供たちが読んだらどんな感想を持つのでしょうか。
これも爽やかな読後感のある小説でした。
しずかな日々 / 椰月美智子(講談社)
一瞬の風になれ / 佐藤多佳子(講談社)
ぼくは勉強ができない / 山田詠美(新潮文庫)