2007年5月

2007-5-19 / 静かな日々

学生の頃に『プールサイド小景』を文庫本で読んで以来、庄野潤三の描く静かな日々が好きで、折々に読んできました。

中でも『ザボンの花』から始まって、『夕べの雲』、『小えびの群れ』、『絵合せ』と続いた作品群は、庄野潤三が自らの家族(特に子供たち)をモデルに書いたエッセイのような小説で、何度か読み返したものでした。

そして、それらの作品では小学生だった子供たちが独立し、若かった庄野潤三夫妻二人だけとなった「山の上の家」での日々を綴ったのが、『貝がらと海の音』に始まる10冊の小説です。

郊外に居を構え、孫の成長を喜び、子供達一家と共に四季折々の暦を楽しむ。友人の娘が出演する芝居に出かけ、買い物帰りの隣人に声をかける―。家族がはらむ脆さ、危うさを見据えることから文学の世界に入った著者は、一家の暖かな日々の移りゆく情景を描くことを生涯の仕事と思い定め、金婚式を迎える夫婦の暮らしを日録風に、平易に綴っていく。しみじみとした共感を呼ぶ長編。(Amazonの書評から)

  • 貝がらと海の音
  • ピアノの音
  • せきれい
  • 庭のつるばら
  • 鳥の水浴び
  • 山田さんの鈴虫
  • うさぎのミミリー
  • 庭の小さなばら
  • メジロの来る庭
  • けい子ちゃんのゆかた

どれも特別なことが起きるわけでなく、淡々と家族の穏やかで静かな日々を描いたもので、日々の穏やかな暮らしを続けていくことの難しさと、続けられることの喜びと感謝に満ちた作品です。

そして、庄野潤三が子供の頃からの人生を振り返って書いた最新作が『ワシントンの歌』です。作家「庄野潤三」がどのように生まれてきたのか、なぜこういう作品が生まれてきたのか、34年来のファンとしても楽しめました。

関連情報

貝がらと海の音 / 1996年 新潮社
ピアノの音 / 1997年 講談社
せきれい / 1998年 文藝春秋
庭のつるばら / 1999年 新潮社
鳥の水浴び / 1999年 講談社
山田さんの鈴虫 / 2001年 文藝春秋
うさぎのミミリー / 2002年 新潮社
庭の小さなばら / 2003年 講談社
メジロの来る庭 / 2004年 文藝春秋
けい子ちゃんのゆかた / 2005年 新潮社
ワシントンのうた / 2007年 文藝春秋

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2007-5-12 / なかなか...

英国公演実現を記念して、連休中の5月4日、WOWOWで三谷幸喜の『笑の大学』特集がありました。この作品、1996年に舞台で初演され(西村雅彦、近藤芳正の主演)、2004年に役所広司、稲垣吾郎の主演で映画化されました。

で、今回は映画版を録画で観たのですが、おもしろかったですね。もともと登場人物が少ない舞台劇なので主役の二人の演技にかかっているわけですが、検事役の役所広司も劇作家役の稲垣吾郎もウマイ! テンポのいい演出に二人の演技がかみ合って、台詞と動きのオモシロさがよく出ていました。

役所広司がうまいのは当然としても、吾郎チャンの演技がうまいのにはビックリ。もともと才能があるのか、演出がいいのか、なかなかのものでした。

スタッフ

  • 原作 … 三谷幸喜
  • 監督 … 星護(「古畑任三郎」、「僕の生きる道」の監督)
  • 脚本 … 三谷幸喜
  • 製作 … 亀山千広/島谷能成/伊藤勇
  • 撮影 … 高瀬比呂史
  • 音楽 … 本間勇輔

キャスト

  • 検事 向坂睦男 … 役所広司
  • 劇作家 椿 一 … 稲垣吾郎

関連情報

三谷幸喜「笑いの大学」スペシャル / WOWOWのページ

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2007-5-3 / この本のどこが...

「これはいい」というものから「これのどこがいいの」というものまで、今回は9編。


このベッドのうえ / 野中 柊 (集英社)

8編からなる恋愛小説集。穏やかな日常の中のちょっとした感情の高まりをうまく表現しています。 マアマアいいかな


花はさくら木 / 辻原 登(朝日新聞社)

田沼意次の時代を描いた軽い時代小説。朝日新聞に連載されていました。文章もこなれているので読みやすいです。 マアマアいいかな


アフリカにょろり旅 / 青山 潤 (講談社)

東京大学海洋研究所に所属するうなぎ研究者たちのアフリカ珍道中。ここまで苦労して得られる学問的成果って? マアマアいいかな


カフーを待ちわびて / 原田マハ(宝島社)

この方、小説家「原田宗典」の妹です。第一回日本ラブストーリー大賞を受賞した作品ですが、文章が硬くて私にはイマイチしっくりきませんでした。 時間があればどうぞ


テムズのあぶく / 武谷牧子(日本経済新聞出版社)

中年の男女の恋愛を描いた「日経小説大賞」の第1回受賞作ですが、ストーリーは幼稚だし文章もまだまだ。ロンドンで舞台の演出家として働く主人公の女性の仕事ぶりなどはよく書けていると思いますが。 時間の無駄


どれくらいの愛情 / 白石一文(文藝春秋)

父は直木賞作家の白石一郎。双子の弟は小説家の白石文郎。4編の恋愛小説集。文章はうまいですが、内容的には微妙ですね。いいものもあり、まずいのもあり。 マアマアいいかな


倚りかからず / 茨木のり子(筑摩文庫)

なんと、茨木のり子さんの『倚りかからず』が文庫版で出ていました。先日ご紹介した『歳月』に続いて読みましたが、実にわかりやすく力強い言葉に、作者の矜持を感じます。現代詩を難解なものだと思い込んでいる方にもオススメです。 これを読まなきゃウソでしょ


憑神 / 浅田次郎 (新潮文庫)

これも文庫で読みました。前回読んだ『月下の恋人』は、さすがの名手浅田次郎も息切れかと思いましたが、これはおもしろい。妻夫木君主演で映画化されていて、6月公開だそうです。 オススメ!!


ゆれる / 西川美和(ポプラ社)

去年の夏に公開されて<映画賞を総なめ>にした映画を、監督・原案・脚本の西川美和さんが自ら小説化した作品。
映画でも、脚本の巧みな心理描写とそれを表現しきった香川照之の演技が評判になりましたが、小説のほうも見事。まだ32歳、これからますます楽しみですね。映画を観ていない方は、映画の方を先に観ることをおすすめします。 オススメ!!

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