先々週、ケーブルテレビの日本映画専門チャンネルで、20年以上前にNHKで放送された「日本の面影」という番組が再放送されていました。この作品はラフカディオ・ハーン(小泉八雲)の日本での生涯を山田太一がドラマ化したものです。
近代化を急ぐ日本の中で、彼が愛した日本の良さが無くなっていく、得るものの対価として日本が失っていくものを見つめ続けた彼の半生を、丹念に描いていました。
「日本にとって将来の危険は自信を持ちすぎることだ。」と言い、日本の軍隊について、「このまま行けば政府もその力を抑えきれなくなる。そして列強の経済的外交的圧力に我慢しきれず、勝ち目のない戦争を始めてしまうでしょう。」と言った八雲の言葉は、そのわずか30数年後、盧溝橋事件で現実のものとなってしまいます。
そして、「日本は機械と科学の道を行き、ごう慢で自分中心の人間で今にいっぱいになる。固いカサカサの魂しか持たない人間で。」と言った彼の言葉もまた、現実のものとなったと言わざるを得ないでしょう。
ドラマでは、八雲をジョージ・チャキリス、妻セツを檀ふみが演じ、小林薫、津川雅彦、佐野浅夫、加藤嘉、樋口可南子などが脇を固めています。山田太一の脚本もいいですが、俳優たちの演技がいい。特に「セツ」の檀ふみ、西田千太郎の妻「クラ」の樋口可南子、セツの母親「チエ」の佐々木すみ江など、女優陣がウマイ。
再々放送の予定は今のところなさそうですが、機会があればご覧になることをオススメします。
スタッフ
キャスト
日本の面影―ラフカディオ・ハーンの世界 / 山田太一(岩波現代文庫)
最近読んだ本の中から続いて9編ご紹介します。
ミカ! / 伊藤たかみ(文藝春秋)
双子の小学生ミカとユウスケ。運動能力抜群で男まさりの「ミカ」と、ミカをやさしく見守る「ユウスケ」の物語。二人の心情がよく出ていて結構ヨカッタ。第49回小学館児童出版文化賞受賞作。
いのちのレッスン / 新藤兼人(青草書房)
新藤兼人の自伝。フィルム現像の下働きから監督になるまでの、そして監督になってからの女優乙羽信子との関係など、興味深い内容。この間まで日経新聞の「私の履歴書」でも連載されていましたが、さらに内容の濃いものとなっています。
ミカ!ミカ! / 伊藤たかみ(文藝春秋)
『ミカ!』の続編。成長したミカとユウスケの中学生生活が描かれています。
きみはポラリス / 三浦しをん(新潮社)
恋愛小説集。ですがその内容はなんでもありで、一般的にイメージする恋愛小説を期待するとちょっと?。
小春日和 / 野中柊(集英社)
70年代の逗子を舞台にした、双子の姉妹「小春」と「日和」の物語。ザ・ピーナッツが活躍していた頃の時代描写と少女たちの会話が楽しい。
月島慕情 / 浅田次郎(文藝春秋)
『憑神』が映画公開中であらためて注目されている浅田次郎の最新作品集。「泣き」のツボを押さえて、良くも悪くも浅田節サクレツ!。
ミサコ、三十八歳 / 群ようこ(角川春樹事務所)
最近、開き直ってオバサンパワー全開の感がある群ようこの、「働く女」小説。さまざまな悩みを抱えながら働く女性への眼差しがやさしい。
卵の緒 / 瀬尾まいこ(新潮社)
作者のデビュー作。『卵の緒』と『7's blood』の2作からなる作品集ですが、どちらも登場人物たちが魅力的で、読んでて気持ちが暖かくなる。
デカイ女 / オオタスセリ(幻冬舎)
ライブハウスを中心に活躍していて、「ストーカーと呼ばないで」という歌で一部ファンの間で話題のオオタスセリのエッセイ集。なさけなくてオモシロイ。