雨が降りそうだったので、サイクリングの予定をあきらめ、竹橋の国立近代美術館に「平山郁夫 祈りの旅路」展を見に行ってきました。
これはこれで良かったのですが、実は同時開催の「崩壊感覚」も、なかなか興味深かったです。
観る者の郷愁を誘う古代遺跡、戦争や災害による破局の光景、時間の経過とともに風化し、朽ちていく物質の姿、そして自己の境界が溶け出すような感覚に怯える人間の有り様。これら「崩壊するもの」のイメージは、20世紀以降の美術の底に絶えず流れていたといえます。
(中略)
この展覧会では、約20名の作家による様々な「崩壊感覚」を集め、それらの多様な意味の広がりを、過去・現在・未来の時間の相と照らし合わせながら検討していきます。
(近代美術館のサイトから)
中に「関東大震災スケッチ」というのがいくつか展示されていて、《あの状況の中でスケッチした人》がいたことに驚きました。
他にも所蔵作品展「近代日本の美術」をやっていましたが、松本竣介「Y市の橋」や横山 操「塔」などを見ることができました。
帰りには工芸館も回ってきたしスケッチもできたので、自転車は走れなかったけど、マアいいか。
国立近代美術館 / 公式サイトのトップページ
9月16日放送のNHK「新日曜美術館」で、日本画家の堀文子さんが特集されていました。
堀さんは70歳を超えてからイタリア移住。82歳のときには、幻の花ブルーポピーを訪ねてヒマラヤの5000mの高地を踏破したほどの超前向きな方で、大病をして歩くことが不自由になった89歳の今も、絵を描かれています。
番組の最後で堀さんが「5ミリでもいいから昇りながら死にたい」と言っていたのが印象的でした。
その堀さんが、2004年に生命科学者の柳澤桂子との共著で出版したのが『生きて死ぬ智慧』です。NHK教育テレビ「こころの時代」でも放送されて話題になりました。
画文集 命といふもの / 堀 文子(小学館)
命の軌跡 / 堀 文子(ウインズ出版)
生きて死ぬ智慧 / 柳澤桂子・堀 文子(小学館)
大森望と豊崎由実さんの『文学賞メッタ斬り!』シリーズの3冊目、『受賞作はありません編』を読みました。
このシリーズ、2004年に出た『文学賞メッタ斬り!』が評判になって何となくシリーズ化されたようですが、なにしろオモシロイ。芥川賞・直木賞をはじめとして、主な文学賞受賞作とその選評についての辛口な評価が満載です。
なかでもオモシロイのが、各文学賞の選考委員に対する評価。例えば芥川賞選考委員の「シンちゃん」こと石原慎太郎についてはこんな調子。
大森:さて、第一三五回芥川賞。伊藤たかみ『八月の路上に捨てる』がとった回ですね。石原慎太郎「またしても不毛」。タイトルを見るだけでだれの選評だかわかります。
豊崎:宮城谷先生が"ピーカブー"なら、この回のシンちゃんは"本髄"。"文学の本能" "現代の本髄"。これも意味がよくわかりません。そして、例によってこんな文章を書いておられます。
「離婚という別離についての、自動販売機の商品補填係りという現代的な仕事の上でのパートナー同士の離婚の感慨の対比が主題となっている。」
わかりません。どれが主語?述語はどこ(笑)?何でこんなにめちゃくちゃな文章が書けちゃうの?
大森:僕がいちばん笑ったのは東京都知事のこの一節。
「総じていえば、私は兼ねている仕事柄雑務が多いので読み過ごしては申し訳ないと思い、候補作が届けられると出来るだけ早く目を通すことにしているが、選考の場に来て論じる際に鮮明に思い出すことの出来る作品がいかにも少ない。」
これ、要するにちゃんと読んでないか、読んでも忘れてるってことですよね。しかも「仕事柄雑務が多い」って都知事の仕事のことでしょ。そういうこと言うなら、どっちかやめろと言いたいですね。
他にも「ジュンちゃん」や「ツモ爺」など、徹底的なイジリぶりで、笑えます。
文学賞メッタ斬り! / 大森望・豊崎由実(パルコ出版)
文学賞メッタ斬り!リターンズ / 大森望・豊崎由実(パルコ出版)
文学賞メッタ斬り!受賞作はありません編 / 大森望・豊崎由実(パルコ出版)