12月の3連休、NHK総合で『ハゲタカ』が再々放送されました。原作が真山仁の『ハゲタカ』と『バイアウト』。本放送が今年の2月から(全6回)。実は昨年9月から放送予定だのが、中村獅童の酒気帯び運転での出演辞退(代わりに松田龍平が出演)や、柴田恭平の肺がん手術があって制作、放送が延期になり、やっと2月から放送が始まったものです。
今回の放送は、9月に2007年「イタリア賞」受賞したのを記念して再々放送されたもので、私は8月の再放送に続いて、またまた見てしまいました。
脚本、演出、俳優たちの演技もまあまあ良かったのですが、音楽が良かったですね。特にエンディングテーマ。テロップで「歌詞エミリ・ブロンテ」となっていたので調べてみたら、『嵐が丘』(1847)の作者のエミリ・ブロンテなんですね。これに『ALWAYS 三丁目の夕日』で日本アカデミー賞最優秀音楽賞を受賞した佐藤直紀さんが曲を付けたということです。
そして歌っているのが、TVアニメの『nana』や、『それでもボクはやっていない』などの"tomo the tomo"。歌だけ聞いて、てっきりあちらの方かと思ったらなんと日本の方でした。
詩のタイトルは"Riches I hold in light esteem"(富は問題にならぬ)。NHKの番組サイトに歌詞が載っていましたのでご紹介します。番組サイトではエンディング映像を観ることもできます。
「富は問題にならぬ」
富なんてものは問題にもならない、
恋だって、考えただけで吹き出したくなる。
なるほど、名誉欲か? そういえば、昔夢見たこともあったが、
日が射すと忽ち消える朝露みたいなものだった。
もし私が祈るとすれば、自然に
口をついて出る祈りはたった一つの祈りだ。
「今の私の心をこのままそっとしておいてくれ、
そして、ただ自由を私に与えてくれ」という祈りだ。
嘘ではない。- 光陰矢の如しで、どうやら私の
終わりも近い、そこで私が求めるものは、ただ
何ものにも囚われない一人の人間として、勇気をもって、
生に堪え、死に堪えてゆく、ということだけだ
訳詩 平井正穂 岩波文庫「イギリス名詩選」平井正穂編より
"Riches I hold in light esteem"
Riches I hold in light esteem,
And Love I laugh to scorn;
And lust of Fame was but a dream
That vanished with the morn -
And if I pray,the only prayer
That moves my lips for me
Is -'Leave the heart that now I bear,
And give me liberty.'
Yes,as my swift days near their goal,
Tis all that I implore -
Through life and death,a chainless soul,
With courage to endure!
ハゲタカ / NHKの番組サイト
テーマ曲 / エンディング映像も見られます
tomo the tomo / 公式サイト
2007年アカデミー外国語映画賞を受賞したドイツ映画『善き人のためのソナタ』が、12月5日、WOWWOWで放送されました。この手の映画はマイナーな映画館でしか公開されなくて、しかも公開期間も短いので見過ごしていました。
冷戦下の旧東ドイツ。国家保安省局員が、反体制の疑いがある劇作家とその恋人の監視を命じられる。彼らの行動を見張るうち、局員は文学や音楽について語り合い深く愛し合う2人の世界に心を揺さぶられる。(STARCATのチャンネルガイドから)」
という内容の映画ですが、よくできた、いい作品でした。脚本・監督のドナースマルクはドイツでの公開当時、若干33歳。綿密な取材にもとづいた作品だそうですが、何より良かったのは脚本と、それを支える役者の演技です。
冒頭の言葉は、ベルリンの壁崩壊後に郵便配達員になった元国家保安省局大尉のヴィースラーが、劇作家のドライマンが書いた本の献辞を見て、「ギフト包装をしますか」という本屋の店員に答えた言葉です。
直接言葉をかわさなくても分かりあえた瞬間の、いいラストシーンです。これ以上書くと映画がおもしろくなくなるので書きません。DVDにもなっていますので、レンタルでどうぞ。
この映画でヴィースラー大尉を演じたウルリッヒ・ミューエは、今年7月22日、胃がんのため54歳で亡くなっています。実生活でも、自身の妻に密告され続け、国家保安省の監視下にあったことで知られています。
スタッフ
キャスト
善き人のためのソナタ / 公式サイト
『善き人のためのソナタ』DVD / Amazon.co.jp
招待券をもらったので、会社帰りに有楽町の東京国際フォーラムで公演中のミュージカル「テイクフライト」を観てきました。
「太平洋序曲」で日本人初のブロードウェイ・デビューを果たした演出家・宮本亜門が、ニューヨーク・ブロードウェイの第一線クリエイティブ・チームと共に創り上げる、東京発→ブロードウェイ行、壮大かつ国際的プロジェクトが発足!
という謳い文句でしたが、結論をいうと期待はずれでした。
まず、会場が国際フォーラム(ホールC)ということで危惧していたとおり、音響が悪すぎ。大勢で歌うシーンになると音が割れてしまって歌詞が聞き取れない。
それより何より、歌い手たちのレベルがミュージカルというにはちょっと。アメリア・エアハートの天海祐希とリンドバーグの城田優はそれなりに頑張ってましたが、デイヴィッド・シャイヤの曲が難しくて、講演開始から1週間以上たっているにもかかわらずまだまだ歌いこなせていない(ラサール石井にいたっては論外)。
前半なんか拍手もパラパラ。休憩を挟んだ後半はいくらか良くなりましたが、カーテンコールも義理でやってる感じでした。
日本の観客はやさしいですね。
スタッフ
キャスト
TAKE FLIGHT / 公式サイト
普段は図書館から借りた本の返却日に追われるようにほとんどの本を読み飛ばしている私ですが、そんないい加減な読書の間にも大事に読みたい本があります。
最近読んでいる「大事に読みたい本」の一つが、須賀敦子さんのエッセイ集です。いま「須賀敦子全集」が河出書房新社から文庫で発刊中で、全8巻のうち第3巻まで発刊済みです。
そのうちの第1巻は、次のような文章から始まります。
乾燥した東京の冬には一年に一度あるかないかだけれど、ほんとうにまれに霧が出ることがある。夜、仕事を終えて外に出たときに、霧がかかっていると、あ、この匂いは知ってる、と思う。
十年以上暮らしたミラノの風物でなにがいちばんなつかしいかと聞かれたら、私は即座に「霧」とこたえるだろう。
第1巻には『ミラノ 霧の風景』、『コルシア書店の仲間たち』、『旅のあいまに』の3つのエッセイ集が収められていますが、どの作品も、記憶の中のイタリアでの生活が筆者の中で熟成してひとつひとつの言葉になっていった、そんな気がします。
去年から、BS朝日で『須賀敦子 静かなる魂の旅』という番組が年1回のペースで放送中で、去年は『第1話 トリエステの坂道』、今年は11月18日に『第2話 アッシジのほとりに』が放送されました。民放にはめずらしく、丹念な作りのいい番組です。
図書館から借りた本のあいまにゆっくり読んでいるのでなかなか進みませんが、これから2巻目をじっくり読み始めます。
須賀敦子全集 第1巻 / 須賀敦子(河出文庫)
須賀敦子全集 第2巻 / 須賀敦子(河出文庫)
須賀敦子全集 第3巻 / 須賀敦子(河出文庫)
須賀敦子 静かなる魂の旅 / BS朝日の番組サイト